呼気NO(一酸化窒素)の測定
1991年ヒトでの呼気NO(FeNO)の測定を行って以来、2013年にはアトピー型気管支喘息ではFeNOが健常者の2-3倍高値を示す事が報告され、翌年には吸入ステロイドでの治療により健常者と同等の数値まで改善することが報告されました。以来、喘息病態・診断管理におけるFeNOの重要性が明らかにされ2013年にはFeNO測定検査が保険適応となりました。
FeNO
喘息患者においてFeNO値は喀痰好酸球数、気管支における好酸球浸潤の程度と正の相関を示し気道の好酸球性炎症の評価に用いられるようになりました。また吸入ステロイド薬による気道閉塞や気道過敏性の改善の程度とも相関し治療効果の判定としても用いられています。
FeNO 測定の位置づけ
- FeNO 測定の現時点における臨床的位置付けは、下気道における好酸球浸潤 (炎症)を非侵襲的に捕捉することができます。
- FeNO 測定値をどのように用いるべきか明確な判断基準は現時点で確立されてはいません。そのため気管支喘息等の好酸球性炎症に関わる疾患の診療に十分な経験と知識を持った医師(日本呼吸器学会、日本アレルギー学会専門医等)が、対象となる患者様の症状やその他の検査所見の情報を見極めた上で、好酸球性炎症の程度を推定するために FeNO 測定値を補助的な指標として用いるべきであるとされています。
気管支喘息の診断
一般に、気管支喘息の臨床診断は、
- 発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳などの症状 の反復
- 可逆性の気流制限
- 他の心肺疾患の除外
1~3を基本とし
- 気道過敏性の亢進
- アトピー素因
- 喀痰・末梢血中の好酸球数増加やFeNO上昇で捕捉された気道炎症の存在
4~6は喘息の診断における目安となります。
FeNO 測定は好酸球性気道炎症を反映する指標の 1 つであり、未治療の喘息患者では一般に高値となります。さらに、吸入ステロイド薬などの抗炎症薬の投与により低値となるため、気道炎症の評価において有用であるとされています。
喘息の管理
FeNO 測定は気道炎症のモニターとして有用であり、FeNO が高値の場合はステロイド反応性の指標となります。しかし、喘息コントロールの指標として日常的に使用できるかどうかはエビデンスに乏しいところも現状においては課題の1つとなっています。
FeNO 測定は気道炎症のモニターとして有用であり、FeNO が高値の場合はステロイド反応性の指標となります。しかし、喘息コントロールの指標として日常的に使用できるかどうかはエビデンスに乏しいところも現状においては課題の1つとなっています。
FeNO 測定値が 25ppb 未満(小児であれば 20ppb 未満)の場合
好酸球性気道炎症が存在することやステロイド薬に反応する可能性が低い。
FeNO 測定値が 50ppb を超える(小児であれば 35ppb を超える)場合
好酸球性気道炎症が存在することやステロイド薬に反応する可能性が高い。
FeNO 測定値が 25ppb ~ 50ppb (小児であれば 20ppb~35ppb ) 場合
臨床的な状況を参考にしながら慎重に解釈する。
日本人の成人健常者における FeNO 正常値
- 18 歳以上の日本人の健常者 240 名(男性 131 名、女性 109 名)を対象に測定された FeNO の正常上限値は 36.8ppb であった。
- 日本人の成人喘息患者の補助診断における FeNO カットオフ値 健常者 224 名と新患で吸入ステロイド薬を未使用の喘息患者 142 名を対象とした、 健常者と喘息患者を鑑別する FeNO 値として、22ppb が最も感度(91%)と特異度 (84%)に優れたカットオフ値であった。
以上よりFeNOが22ppb以上であれば喘息の可能性があり、37ppb以上であれば喘息である可能性は非常に高いと診断出来る。
測定方法
1息を大きく吐いた状態(深呼気位)でマウスピースをくわえ、大きく息を吸い込み(最大吸気位)ます。
2最大吸気位から一定の速度で息を吐き始めます。
3測定器の画面を見ながら約10秒間息を吐き続けます。
4その後、1分程度で画面上に結果が表示されます。
測定における注意事項
- 呼吸機能検査によりFeNO値が低下し1時間程度回復にかかるため、呼吸機能検査の前に測定します。
- 食事や飲料水の種類により変動するため、検査前1時間は飲食を控えて頂きます。
- 喫煙者は非喫煙者に比べて低値となります。
- 治療薬により低下します。
- アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などにより高値を示すことがあり、FeNO値が高値でも必ずしも喘息とは限りません。