貧血の話 その3 巨赤芽球性貧血・悪性貧血
今回はビタミン不足でおこる「巨赤芽球性貧血」について説明します。
巨赤芽球性貧血とは、文字通り赤血球が巨大化して、異常な赤血球となり、貧血となります。「ビタミンB12」もしくは「葉酸」が「不足した」か「利用できなくなった」ために起こる貧血です。
何故ビタミンB12や葉酸が不十分だと、貧血になるのでしょうか?
ビタミンB12 と葉酸は、「DNAの合成」に必要な成分です。DNAがうまく作れないと、赤血球も大型化した異常な形になってきます。ビタミンB12 や葉酸は食べ物から摂りますが、ビタミンB12 を吸収するために、胃粘膜で分泌される「内因子」と結合する必要があります。胃を手術で切除した方は、食事から栄養がとれても、「内因子」がないためにビタミンB12 が吸収されず、巨赤芽球性貧血貧血になることがあります。
また「内因子」に抗体のできる自己免疫疾患でもおこり、この場合は「悪性貧血」と呼ばれます。ビタミンB12 は肝臓貯蔵されている分があるため、胃を切除したかたでも、すぐに貧血になるのではなく、数年以上経過すると貧血となってきます。一方葉酸は体内の貯蔵量が少なく、妊娠、炎症、悪性腫瘍、血液の病気など、需要が高まると、よく欠乏します。摂取不足の方で多いのは、葉酸では、飲酒量が多くて、バランスよい食事がとれない方、ビタミンB12 ではベジタリアンの方です。
症状として、特徴的なのは、ビタミンB12 欠乏では、神経細胞の合成も障害されて、しびれや歩行障害などの症状を起こしてくることです。高齢の方ですと認知症の症状がでることもあります。葉酸欠乏では下痢、舌炎、筋萎縮などを進行すると起こしてきます。まれには若年白髪の原因となることもあります。若い女性でも注意が必要です。妊娠初期にビタミンB12 や葉酸が不足すると、赤ちゃんの神経に異常を来してしまいます。
妊娠中は必要量も増加するので、しっかり必要量を摂る、場合によってはサプリメントや薬を併用する、ということも必要になってきます。
巨赤芽球性貧血は、採血すると、赤血球が大きくなったり(=大球性)、赤い色が濃くなったり(=高色素性)する貧血になり、血液のビタミンB12 と葉酸を測定し、骨髄検査で異常な赤芽球を確認することで診断が確定します。他にも見分けなければいけない病気もあるので、これらの検査が必要になってきます。
治療は内服薬(錠剤)、注射薬など色々な形で補充していきます。「内因子」がない、もしくは抗体がある「悪性貧血」の方であれば、注射して補充してあげないと、いくら口から接種しても増えません。摂取不足の方であれば、内服薬で大丈夫です。
ご心配があれば、採血で確認いたしますので、ご相談下さい。
内科・血液内科
専門医 西村倫子
診療担当時間 火曜日9時30分~12時30分