大腸カメラについて
下部消化管内視鏡検査は、一般的に大腸カメラと呼ばれています。この検査では、肛門から先端に高性能カメラがついた直径1cm程度チューブを挿入し、大腸全体と小腸の一部を観察します。
大腸カメラは粘膜を直接観察できるため、腹痛・便潜血・下痢・便秘・血便などの原因となる炎症性腸疾患・過敏性腸症候群、そして日本の最新のデータでは年間15万人以上が罹患(大腸がんと新たに診断)し、がんの部位別では第1位になっている大腸がんを正確に診断できます。
便潜血検査や採血での腫瘍マーカー値、注腸X線検査といった従来の大腸検査では見つけることが難しかった早期発見が大腸カメラ検査では可能です。そのため、近年では大腸がんの予防と早期発見に積極的な大腸カメラ検査が推奨されています。
大腸カメラでわかる病気
- 大腸ポリープ
- 大腸がん
- 大腸憩室症
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性腸炎
- 出血性腸炎
- 偽膜性腸炎
- 悪性リンパ腫
- カルチノイド腫瘍
など
大腸がんについて
日本における大腸がん(結腸がん・直腸がん)は増え続けています。
最新がん統計のまとめでは、2019年の大腸がんのがん罹患数(大腸がんと新たに診断された数)の全がんの中での順位は、女性・男性ともに第1位で、年間で155625人が大腸がんと診断されております。
2022年の大腸がんの死亡数は53088人で、全がんの中で大腸がんによる死亡は、女性は第1位、男性は肺がんに次ぐ第2位となっています。(全国がん罹患データ・全国がん死亡データ)
大腸がんは、早期に発見できれば内視鏡による治療で治療することができます。
前がん病変である良性の腺腫の状態で切除すればがんの予防にもなります。しかし、腺腫や早期がんは自覚症状がほとんどないため、積極的に検査を受けなければ気がつかれることがありません。
当院ではその場で切除可能なポリープに関しては日帰り手術を行なっております。
(ただし出血のリスクが高いものや、サイズが大きいなどの理由で外科的切除や粘膜下層剥離術が必要なものなどではがん研有明病院をはじめとする関連病院へ紹介させていただく場合もあります)
便潜血検査と大腸内視鏡について
便潜血検査は2日間の便を採取し、血液の混入の有無を検査するもので、非常に簡便で安価な検査でありながら、大腸がんの早期発見に有効とされています。
しかし便潜血検査の精度は必ずしも高くなく、確実なものではありません。たとえば早期がんの50%、進行がんの20-30%は便潜血検査が陽性とならず、見逃されてしまうとされています。便潜血検査で陰性とされた方の中に、大腸がんが発見された例を何例も経験しています。
そのため便潜血検査で異常なしと指摘された方でも、腹部の症状や排便異常がある方は大腸内視鏡検査が推奨されていますし、たとえ症状がなくても40歳を目安に一度は受けておくことをおすすめしています。
当院の特徴
オリンパス社の最新鋭の内視鏡システム「EVIS X1」を導入
当院では、最新鋭のの内視鏡システム『EVIS X1』を導入しております。オリンパス社の世界的に高い評価を受けてきた最新技術が組み込まれており、医師の高度な技術力と豊富な経験を活かして検査を行うことが可能です。特殊光による観察や画像処理によって、毛細血管分布や炎症の評価が正確に行うことができ、微細な病変も発見しやすくなりました。これにより、患者様の負担を軽減しつつ、短時間で精密な検査を行うことが可能となっています。EVIS X1の特徴は下記の通りです。
TXI(構造色彩強調機能)
微細な病変を見逃さないように、表面の凹凸や構造、色調、明るさなどの微妙な変化も強調して映し出す画像技術です。通常の光では見えにくい部分における病変も、この技術を用いることで容易に発見できます。
NBI(画像強調観察機能)
粘膜表層の微細な構造や毛細血管を強調して表示し、観察することができるオリンパス社の内視鏡システム独自の技術です。特定の波長の光を用いて、ヘモグロビンに吸収されやすい光を照射することで、血管や周辺の粘膜を鮮明に強調して表示します。
RDI(赤色光観察)
RDIは、赤(Red)、黄色(Amber)、緑(Green)の狭い帯域光を活用し、深部血管をより鮮明に表示する画像強調技術です。これにより、内視鏡治療において出血の防止や出血部位の特定、止血処置がより効率的に行えるようになりました。
EDOF(被写界深度拡大技術)
EDOFは、近点と遠点それぞれにピントを合わせた2つの画像を組み合わせることで、ピントが広がった内視鏡画像を生成する技術です。これにより、腸内の蠕動運動や心拍などの動きがある部位も、鮮明な画像で観察することが可能です。
極細径スコープ
当院で採用している大腸内視鏡はオリンパス社製のPCF-H290I(径11.3mm)、PCF-PQ260L(径9.2mm)という2種類のスコープで、いずれも大腸用の内視鏡としてはとしては細径でしなやかなタイプのものです。
太くて固いタイプの内視鏡に比べ、挿入時の不快感が大幅に軽減されているのが大きな特徴です。
二酸化炭素送気の使用
大腸カメラ検査では、しぼんだ腸を膨らませることですみずみまで観察が可能になります。通常は空気を送り込んで腸を膨らませていますが、不快な腹部膨満感が起こり、それが検査後もなかなかおさまりませんでした。当院では空気ではなく、吸収の早い二酸化炭素を使うことでおなかの張りを大幅に抑えています。二酸化炭素は吸収されやすいだけでなく呼気で自然に排出されるため、お体への負担も少なくなっています。ほとんどの場合、検査終了時にはほぼおなかの張りがなくなっており、腹部膨満感が残ることはありません。
当院では大腸カメラだけでなく、胃カメラ検査でもすべての症例に二酸化炭素を使用した検査を行っています。
大腸内視鏡後に撮影した腹部レントゲン写真です。黒っぽく見える部分が腸管内にたまったガス像です。左Aの写真が二酸化炭素を使用した検査後、右Bの写真は通常の空気を使用した検査後です。残存ガスが明らかに少ないことがご理解いただけると思います。
軽い静脈麻酔の併用
軽く居眠りをしているような浅い麻酔状態で大腸カメラ検査を行うことで、苦痛を感じないようにする方法です。静脈に鎮静剤や鎮痛剤を適量注射し、意識下鎮静法(セデーション)とも呼ばれています。
とても楽に検査を受けられるため、当院では、ご希望される方にこの方法を用いた大腸内視鏡検査を行っています。ただし、重篤な疾患がある場合や、ご高齢の方にはこの方法を用いることができない場合もあります。
意識下鎮静法での検査終了後は、可動式の検査ベッドに横たわった状態でリカバリー室に移動し、しっかり目が覚めるまでリカバリー室でゆっくりお休みいただいています。リカバリー室で目を覚ますまでの時間は30分から2時間程度と個人差があります。
なお、検査後、当日の自動車や自転車の運転は禁止です。そのため、ご来院には公共交通機関のご利用をお願いしています。
上部・下部内視鏡検査の連続実施可能
当院では、下部内視鏡(大腸カメラ)と上部内視鏡(胃カメラ)検査を同日に受けられます。同日検査では、胃カメラ検査を受けていただいた後、連続して大腸内視鏡となります。別日に改めて検査を受ける必要がないのでお忙しい方でも両検査を受けやすく、さらに薬剤費や再診費なども1回分で済むため医療費負担の圧縮もできます。
大腸ポリープ切除に対応
検査時に大腸ポリープが発見された場合、その場で切除することも可能です。大腸ポリープはがん化する恐れがありますので、切除することでがんの予防にも繋がります。また当院で対応できないものに関しては、専門病院を紹介いたします。
大腸カメラの流れ
1検査前
2検査当日
前処置
検査4時間前から2リットル程度の下剤を服用し、腸内をきれいにします。
※前処置はご自宅で行って頂きます。
検査準備
受付後、更衣室で検査着にお着替えいただき、検査直前に鎮静剤と腸の緊張をとる薬を注射します。なお、ご高齢の場合などでは、脱水予防の点滴を行う場合もあります。
3検査
ベッドに横になっていただき、肛門から内視鏡を挿入します。
盲腸までの大腸と小腸の一部を直接観察する検査の所要時間は、個人差がありますが15~20分程度です。
病変が見つかった場合には、必要に応じて組織を採取して生検を行います。
ポリープが見つかった際には、その場で切除することがあり、この場合には検査の所要時間が多少長くなります。
検査終了後は、リカバリー室で30~90分程度ゆっくりお安みいただき、鎮静剤の効果がなくなったら、全身の状態を確認した後でお着替えとなります。その後、検査内容をご説明しています。
検査費用
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
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内視鏡検査のみ | ¥ 2,500前後 | ¥ 5,000前後 | ¥ 7,000前後 |
内視鏡検査+病理組織検査 | ¥ 3,500前後 | ¥ 7,000前後 | ¥ 10,000前後 |
大腸内視鏡ポリープ手術 (1臓器) |
¥ 9,000前後 | ¥ 1,8000前後 | ¥ 27,000前後 |
大腸内視鏡ポリープ手術 (2臓器) |
¥ 10,000前後 | ¥ 20,000前後 | ¥ 30,000前後 |
大腸内視鏡ポリープ手術 (3臓器) |
¥ 11,000前後 | ¥ 22,000前後 | ¥ 33,000前後 |
使用する薬剤の種類や点滴の有無によってお値段が前後することがあります。
内視鏡検査前の診察代や事前血液検査代、その他管理料は含まれておりません。
※病理組織検査は大腸や小腸の組織を一部採取して、腫瘍細胞が含まれていないか、炎症はどの程度かなどを顕微鏡で詳細に調べます。
※大腸内視鏡検査時に大腸ポリープを切除した際は必ず病理組織検査を行い、がん細胞が含まれていないかどうかや、ポリープが完全に取りきれているかなどを顕微鏡で詳細に調べます。
※大腸内視鏡検査時に大腸ポリープを切除した際は「日帰り手術」「内視鏡手術」扱いとなりますので、民間の保険会社に加入している方で条件を満たす場合は保険金の請求が可能です。かかった金額以上の保険金が支払われるケースが多く、費用の負担が少なくて済みます。